フロムについては色々と批判もあるわけだけど、彼の権威主義を実力主義に結びつける理解は鮮やかだと思う。
つまり「人は実力で人生を切り開けるし、切り開くべだ」と考えていて、しかしイマイチうまくいってない人が、「自分より成功している人は実力があってそうなっているので、その人の権威に従う」「自分より社会経済的地位が低い人は、実力のせいでそうなっているので、私に従うべき」だと考える、という図式になっている。
フロムは、このような上に対して従順で、下に対して厳しい性格を「権威主義的パーソナリティ」と呼んで、それがファシズム支持の原動力になっていると解釈した。
で、そういう人がどこにいるのかというと、中流(新旧の中間層)だという。
なぜなら、労働者階層の人は、すでに資本主義社会でのし上がろうという気持ちを持てない状態にあるから、実力主義も何もない。上流階層の人は既に成功しているので、無理に権威主義になる必要がない。
一部の成功者と大多数の没落者に分かれる運命にあり、野心と挫折感が同居している中流下層に危険がある、というのがフロムの解釈だった。
1930年代のドイツについて言われたことが今の日本に当てはまるかどうかはともかくとして、呉座さんなんかを見ていると、「ああ、権威主義的パーソナリティだよなあ」とよく思う(雁林さんなんかも)。